私はスマブラが苦手だ。
唐突にそんな発表をしたのには訳がある。
久しぶりに大乱闘スマッシュブラザーズSP(Switchのやつ)をやりたくなって、当然オンラインマッチを始める。
私がよく使うファイターはテリー。餓狼伝説から参戦した有料ダウンロードコンテンツのキャラクターだ。
ルールは終点(床が動いたり回ったりがない、シンプルな平地)、アイテムなし、チャージ切り札なし、3ストック、7分のいわゆるガチ1on1だ。
運などはほぼ絡んでこない。プレイヤーの実力がすべてとなっている。
ということでやってみよう。VIP行きたいなあ。
おお、これはすごいな。
びっくりするほど勝てない。
勝てない、が表現として1番適切だと言えよう。
勝つためのあらゆる道筋をたぐる前に手をはたかれる感じだ。
剣を持ったファイターにずばずば切られているテリーを眺めていたら試合が終わっていた。
ちなみに血が出たり死んだりはしない。だからといって人を斬っていい理由にはならない。
ただ、たぶんテリーは切られたり爆発したりしてもいいですよという同意書にサインしたのだろう。だってこちらも信じられないくらい人を殴るのだから。
正直勝つためのコンボとかテクニックは完全に疎かだから、シンプルな練習不足もあるだろう。
しかし私が戦闘力700万をうろうろしているのにはもうひとつ大きな問題があった。
私が緊張しいなのだ。
どうしてかは分からないがマッチングしてゲームが始まる音が鳴った瞬間、動悸が出る。
戦っているときはもうそれは普段の2倍くらいの速度で脈打つ。脈打つな!と思うと余計に脈打つ。
脈打って強くなるならよいが明らかに弱体化している。訳の分からない操作ミスが増えたり、コントローラーの訳の分からない場所に指を引っかけたりしているのだ。
もう600時間以上遊んでいるのに一向に慣れることができない。600時間以上動悸をしている。
他のゲームではこうはならない。
例えば総プレイ70時間くらいのテトリス99は残り5人以下にならないと動悸は出ないし、あまり緊張しない。
テトリス99は見なければならないところが非常に多いのでその分集中しなければならない。その度合いはスマブラとほぼ同じくらいなはずなのだが。
つまり集中しているのと対人戦であることは緊張の要素ではあるかもしれないがそれが全てではない。
そこで私はひとつの結論にたどり着く。
オンラインのスマブラとは、つまり会話なの、だ。
スマブラの対戦相手は98分の1の画面ではなく、私と同じ画面の中で一緒に戦う。場所を共有している。
そして、ファイターは対戦相手の左親指が動かすスティックによってかなりちょこまかと縦横無尽に動き回る。左親指の動きが正確に反映される。
そして技を繰り出すためのボタンも当然相手の右手で操作している。
つまり、私と相手は遠隔の密室で指同士のコミュニケーションをとっている。そこに言語はない。お互いの指を弾いたりつまんだり、本当に原始的なやり方で、会話をしているのだ。
したがって、会話、コミュニケーションそのものが緊張して苦手な私は必然的にスマブラも満足にできないということになる。
スマブラの上手さと人前でどれくらい緊張するかのデータを散布図にまとめてみれば、おそらく強い相関関係が認められるのではないか。
苦手な理由が見つかったので嬉しくなって、つい苦手を発表してしまったというわけだ。
ちなみに解決策は見つからない。喜びながら歩いていたらいつのまにか落としてしまったようだ。