若者代表

お前は人生のなんなんだ、そう思った若者がひとり、またスマホを投げた。

 

SNSなど些細なきっかけで見始めるものだから、しかえしに些細なきっかけで見るのをやめてやったのだ。

 

清々したので街へ出ると、なにやら賑わっている。

 

街全体ではなくて、自分の前半の50メートル四方くらいが賑わっている。

 

遠くを見て前方を見ない自転車に乗ったお年寄り、スーツの若そうな男性、こちらの目をつぶすことだけが生きがいそうなハイビーム搭載カー、これらが向かってくる。

 

横を見ると買い物帰りの目深に帽子を被ったこれまた自転車乗り、何をしているのか判断がつかない私服の女性が自分の位置でちょうど追いつく速さで向かってくる。

 

これでは全てが衝突してしまう。

 

急いで速度の速いものへ警告するが、ハイビームはただいたずらに目を攻撃してご満悦。

 

遠くを見る自転車も近くが見えないままふらふらと向かってくる。

 

セルフ目隠し帽子の自転車はそっぽを向いており、私服とスーツはそれぞれ手元に光る画面から視線を戻そうとしない。

 

咄嗟にとった行動は、全く見当違いの意見をあえて述べることだった。

 

すると全員が議論を巻き起こし、交差点の中央に巨大な渦を形成した。

 

この中央は、行くにつれて速度が落ち、停滞する。ひとつの考えに固まるともう動かそうとするだけで拒否反応を見せ膨張し、見るに耐えない爆発を発生させてまた収縮する。

 

私は触らないようにそうっと横を通った。